ロンボク島旅行記
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TAKAさんが釣って来た魚の唐揚げが食卓に並んでいた。食卓を囲むメンバーは、唯一のゲストである私とオ
ーナーのTAKAさん、それとコックのアンとスタッフのブッダとロンゲ。ブッダの名付け親はアン。頭を丸坊主にし
ていて、痩せていて、腰にサロンを巻く姿は仏教のお坊さんそのものだから。ロンゲはただ単に彼がロング・ヘ
アーだったので、私がそう呼んでいただけ。ブッダもロンゲも英語は苦手の様子で、アンかTAKAさんの通訳が
必要だった。
夕方6時半をもって1日の断食は解除される。翌朝の5時までは、何を食べても、何を飲んでも構わない。当
然私以外は、一日中飲まず食わずで過ごしてきたのだから、この瞬間を待ちに待って迎えたわけである。ご飯
にラーメンを汁ごとぶっかけて、右手で掬って食べる。当然私にはこの技は不可能なので、予めフォークとスプ
ーンが用意されていた。アンがてんこ盛りのご飯をお替わりする。改めて、断食期間の長さとつらさを見て知る
ことができた。
それにしても手づかみの食事習慣には驚いた。ライスやおかずだけならまだしも、スープをかけてビチャビチ
ャになったご飯までも手で掬ってしまうのだから。汚れた手は、皿に張った水の中で濯ぐ。これすら私には出来
ない芸当だった。私にとって、手は両手で擦って洗うもの。不浄とされる左手をこの中に入れるわけにもいかな
かった。
食事が始まって間もなく、アザーンの大音響が響いた。アザーンは1日5回の礼拝の時を知らせる短い詠唱
のこと。通常、ホテル街に近いところでは音量を下げるそうだが、アイルの島では違っていた。初めて知った事
実であるが、これはテープではなく、ライブであるということだった。どうりで今聞こえている長老のアザーンは素
人っぽい下手な歌声で、咳払いや会話もしっかり中継されていた。当然、ここに居るスタッフたちもこの経験は
持っていて、聴衆と1本のマイクを前に、しっかりと歌い上げなくてはならないらしい。歌本など当然なくて、子供
の頃から暗記させられるのだと彼らは語った。
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